人智学的つれづれ草

日常の体験と人智学で学んだことを結びつけ、広げます。

おおかみと満月

満月と狼

満月を見ると心がざわめくような、ちょっと落ち着かないような印象を持つ。これはなぜだろうか?

満月に結びついた儀礼を調べてみると、ほぼすべての文明や宗教で、収穫と浄化や予言、「境界を開く」といった働きを認めていたようだ。一部を挙げると、

中国の中秋節では、満月に月餅を供え、月神を祀り、
日本の十五夜では、すすきと団子を供えて稲の霊を迎える。
古代ローマでは、狼・月・境界の結びつきが伝承として残っていて、
古代エジプトでは満月に死者の魂が月光と共に蘇ると信じられていた。

満月儀礼の共通点を見てみると、ひとつは収穫、出生、治癒などの「生命力の増大」があげられる。また、感情がきわまり、それが外にあらわれ出る。予言や夢見、シャーマンのトランス状態がそれにあたる。

満月には、太陽光が月を全面的に照らし返す。この時期には、「アストラル体が外向化しやすい」と言われ、感情が刺激されやすく、眠りが浅くなり、夢が vivid になる。また、心は創造的になるが暴走もしやすく、衝動や依存心、高揚感が出やすいという面も持つ。古代ローマの月の神Lunaから派生した“ルナティック”は、常軌を逸した変人という意味をもつ。

満月には危険な面と恩恵をもたらしてくれる面がある。感情の暴走に加え、判断力の弱まりや集団ヒステリーなどが起きやすい一方、イマジネーションが開きやすくなり、芸術的霊感が強まり、人間関係の“感情的真実”が見えやすくなる。芸術家や神秘家にはチャンスといえる。作曲でも詩作でも絵画でも、満月に霊感が生まれやすい。

ところで、狼伝説との関係はどうなっているのだろう?

狼は一面では、「攻撃性・警戒・本能的洞察」の象徴といえる。物質界よりも「感情界」に近い感覚をもつ動物と解釈できる。感情体の働きがもっとも“地上界で生々しく表現された動物”とみなせる。

人間は自我があるから制御できるが、動物、とくに狼のようなアストラル主体の存在は、月の影響をストレートに受ける。月は想像力や興奮を反射し、狼はこれに反応しやすい。

古代の人の目には、狼が“霊的存在と響き合っている”と映ったのかもしれない。特に北方の民俗では「狼は霊界と通じる動物」とされたようだ。人間が失った“夜の感受性”を狼が保ったと感じていたのではないだろうか。日本の神道の一部では、狼は「大神」といわれ、畏敬の念をもって祭る存在だ。言わば「白狼」だ。

アストラル体は欲望や衝動、攻撃性など魂の影の部分を担うという。満月の時はそれが最大化し、狼はそれらの性質を象徴化した存在である、という見方をすれば、「黒い狼」となる。

霊学的伝承では、感情が乱れやすい人や衝動性の強い人、怒りや欲望を制御できない人は満月で「動物的衝動」が強くなると見なされた。これが“満月になると人が狼に変じる”という象徴的な物語の起源のような解釈もできる。

今宵は、とくに月が大きく奇麗だ。心を静めて鑑賞したい。お酒を飲んで「ワオーン」などと叫ぶと、大神さまに申し訳ない。