温泉が好きでよく出かける。一番の理由は、緊張を解きほぐしてくれるからだ。頭でっかちになっている状態のバランスを取り戻す、という意味もある。
頭の使いすぎを、「頭脳過活動」というらしいが、その状態は、シュタイナーが現代人に対して最も警告したものだ。思考の過熱ともいえる。振り返ってみると、常に頭部が熱い感じがする。寝てからも考えが止まらないこともある。
人智学では、これを「アストラル体と自我が頭部に集中して偏在し、身体との結びつきが薄れる状態」とみている。アストラル体とは、思考と感情と意志の担い手、とでも思っていただければいい。
頭部の過剰なアストラル活動を鎮めるには、ローズマリー足湯がいいそうだ。シュタイナー系の療法では、「思考が過熱して眠れない人は、寝る前に足湯を」と勧めている。やってみると、頭が静かになり、胸と足に温かさが降りるような感覚になる。同じような状態の人には、おすすめだ。ラベンダーのエッセンシャルオイルを2〜3滴に自然塩ひとつまみ、というのも、とてもいい。
あまり考えると逆効果なのだが、温泉というものを一応考えてみると、温泉は単なる「熱い水」ではなく、地熱という火と流動する水とが地中で交わる場といえる。温泉地の環境を考えると、それだけでなく、
火 地熱・マグマの力、これは内なる太陽の意志
地 鉱物・岩盤は形と安定の力
水 湧出する温泉水は、生命の運搬者
空 湯気・香気は、霊的呼吸・上昇の力
と言え、温泉地には四大元素がすべてそろっているのだ。温泉とは、この四元素が地球の奥で調和する“聖なる交差点”ともいえる。
日本の伝統では、古くから「山には神が宿る」「湯は神の恵み」と考えられてきた。温泉は「地霊」と「水霊」が出会う場所。山の神・火の神・泉の神が出会う場所だ。古い温泉地には必ず薬師如来や地蔵尊が祀られ、「湯治=霊治」としての意味があった。温泉という名の自然儀式だ。
温泉は、地の底からやってくる。火山活動はすべて、地球のリズミカルな呼吸だ。だから、温泉に入ることは「地球の呼吸に自らの呼吸を合わせる行為」というわけで、これが温泉の“霊的な治癒力”の根本だ。
温泉に行くと、必ず‘成分表’があるが、人智学の認識では例えば、
硫黄は、古い生命リズムを燃やし、新しい流れを生む
鉄は、自我を強化し、活動性を呼び戻す
塩化物は、境界を回復し、感情の拡散を防ぐ
炭酸は、アストラル体を解放し、喜びを呼ぶ
と言われている。温泉に浸かることは、鉱物の霊的“印象”を自分の生命体に転写することでもある。
湯治場に行くとき、人は
•日常の社会的自我から離れ、
•自然の霊的世界に身を置き、
•沈黙し休息し、共同体に触れる。
まさに、「生き返るー!」という感じだ。
日本人は古来、その鼓動に身を浸し、自らの魂を地球のリズムに調律してきた民族と言えるのかもしれない。
今晩は、“草津の湯”でもお風呂に入れて、気分だけでも浸ろうか。