2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧
双子 パウル・クレー私の部屋の壁には、この絵が長い間かかっている。ほかにも、ピカソのピエロとか、ルオーのピエロとか、クレーの天使像とかがあるが、この絵は唯一特別な存在だ。絵の中の二人が、私と兄以外には見えないからだ。兄は認知症で、もう幼児の…
すべての山に登れ ギター譜ギターの発表演奏会で、“サウンド・オブ・ミュージック”の中にでてくる“エーデルワイス”という曲を合奏で弾くことになった。この曲も素晴らしいのだが、私個人としては、“Climb every mountain”が大変気に入っている。「Climb ever…
節目にあたり、私のこよなく愛する板画家のことを偲びたい。そう、棟方志功は版画家ではなく、“板画家”とみずから言っていた。板そのものをまさに生き物と認識していたからだ。宗教哲学者としての柳宗悦は、棟方志功を非常に高く評価していた。彼は棟方の芸…
ローマへ観光旅行に行った時の写真を整理しながら思い出したことを書く。シュタイナーが言った言葉、「ローマに行きたければ、私たちが赴かねばなりません。ローマは来てくれないのですから」という、ちょっと不思議な発言だ。どういう真意があるのか、長年…
今日は、シュタイナー教育の先生の講座を聞き、小学校で行われている、体を使った授業を経験させていただいた。お遊戯のように見えるが実は、体を動かすという単純な行為の中に、霊的にすごく深いことをやっているんだ、ということを学んだ。知識を詰め込む…
AIとこんな対話を交わした。面白かったので残しておく。私の短い質問や回答に対して、非常に長い答を返してくるのが特徴だ。かなり、しつこい。AIの「性格」が、つかめたような気がした。AI : あなたが思う「自由の行為」とは、どんな場面、どんな感覚の中で…
私は、いつも二つの命題に縛られているような気がする。「何のため?」という目的の確定と、「なぜなら」といういいわけ探しだ。「何のため?」というのは、目的の牢獄といえる。「何のためにこれをするのか?」という問いは、本来なら行為に方向性を与えるも…
10月23日は、二十四節気の“霜降”で、露が霜へと変わる時期とされている。これは、空気中の水分が冷え固まり、透明な氷の結晶となって地上に現れる現象だ、という説明を聞きたいと思う人は、おそらくいないだろう。かと言って、「寒くなりましたねー!」…
『思考力を磨くための音楽学』泉谷閑示 YAMAHA泉谷閑示氏の『思考力を磨くための音楽学』という本を読み、音楽を演奏する立場から、大変教えられたことがあったので、その印象を書きます。著者は、「死んでいる音楽」と「生きている音楽」、音楽の本物と偽物…
精神的な領域で、ある存在を認識した時、それが善き存在に見えたとしても、その時「これを利用してやろう」と思った瞬間、別の形態に変化する、ということを聞いたことがある。現代のアニメや古代からの神話によく出てくるテーマだ。これは、対象の本質が“自…
『渦巻の芸術人類学』鶴岡真弓 青土社ケルト文化研究の第一人者である鶴岡真弓先生の近著、『渦巻の芸術人類学』の出版を記念した講演を聞きにいったので、その感想を書く。哲学者なら「渦巻きとは何か?」という形の問いを立て、その定義や意味を確定したが…
10月20日は、頭髪の日だそうである。あたまの薄さが気にかかる今日この頃、それについて人智学的に考えてみた。身体的考察ではなく、髪が失われる現象をどう意味づけるか、という問いによって、精神的進化と個の使命を考えてみたい。髪の有無を通して、…
あるお寺の境内を歩いていたら、「子供の合言葉」という題で、こんな文句の看板を見かけた。一部分だけ書き留めた。ひとの とりえを そだてよう じぶんの とりえを ささげよう とりえ とりえが むすばれて このよは たのしい ふえせかい(「ふえ」とは不壊の…
動物を愛するテーマのテレビ番組には、保護された犬や猫が、新しい飼い主と家族になっていく様子を追うドキュメンタリーなど、数多くある。動物愛護(法)の精神は、どうして生まれたのかを調べ、考えてみた。古代から中世にかけて、多くの文化では動物を「人…
小松和彦先生が文化勲章を受章された。妖怪ファンの一人として、お祝いを申し上げたい。先生の妖怪論は、「妖怪とは、人間社会が自らの境界を意識化するために生み出した他者である」という思想に集約されると思う。「怪異現象」や「昔話の登場人物」として…
今、年末のギター発表演奏会に向けて、ソロと合奏の練習中なのだが、合奏のうち一曲は、「4台のギターの為の6つの作品」という曲をやっている。この曲の第3パートを受け持っていて、毎日ひとりの練習と2週間に一度集まってみんなで練習している。ひとり…
最近よくヴィランという言葉を聞く。悪役・敵役の登場人物、あるいはその演者のことだそうだ。テレビ番組でも「ヴィランの言い分」というのがあり、その紹介文は、このように表現されている。“ゴキ〇リ、二酸化炭素、ムダ毛…「汚い、有害、醜い」と、世間か…
波長200~235ナノメートルの紫外線が、人体の皮膚や目に害をほとんど与えずに、飛沫や空気中のウイルス・病原体を不活性化できる研究が進んでいるそうだ。これは、「見えない光」が「見えないウイルス」を制御しうる、と解釈できる。物質に影響を及ぼす“目に…
今日バスに乗っていると、下校中の小学生低学年の子たちがおおぜい乗ってきて、耳をふさぎたくなるほど、ものすごく騒がしかった。これは、嫌な思いをした、という感想では全くなく、彼らの生命力の奔流を、叡智の光の“地上のこだま”として感じさせてくれた…
9月29日は、国連が定めた「食料ロス・廃棄啓発のための国際デー」だったそうだ。NPO法人日本もったいない食品センターが公表している食品廃棄物は、令和4年6月農林水産省発表の資料によると、【事業系】:275万トン 【家庭系】:247万トンとのことで、キログ…
神嘗祭は、天照大御神に初穂を奉る祭りで、天と地の結び、生命の循環の完成を感謝する行為だが、これを人智学の視点から解釈すると、非常に深い霊的意味が見えてくる。「人間は自然界の生命を通して天上の力と関わる使命をもっている」と考えるのが人智学の…
変身物語の講座を受けていて、バレエの「コッペリア」などの話を聞いた。人形作り職人のコッペリウスが精巧な等身大の人形コッペリアを作ったのだが、青年フランツはコッペリアに恋をしてしまう、ことから始まる話だ。これをきっかけに、人形が人間になる物…
「万引きで6度目の服役」という新聞記事が目に留まった。“もう絶対に繰り返さない”そう心に誓っても、長続きはしなかった、とある。福島刑務支所の話だ。万引きへの依存症は、治療しなければ再犯は防げないと指摘する専門家もいるそうだ。服役中の本人は、「…
絵本極楽 風濤社 西川隆範これは絵本『極楽』にでくる言葉だ。シュタイナー研究者で翻訳者の西川隆範さんが書かれたもので、絵本の最後は、「たのしいときも、つらいときも、わたしたちはあなたといっしょです。わたしたちは、いつも、あなたをおうえんして…
こころの時代というテレビ番組で、医師で僧侶のかたのことを取り上げていた。ALSの患者さん500人以上の見取りをされてきたそうだ。ご本人は、医師としては「連戦連敗だった」とふりかえり、僧侶としては、「死者から教わることが多い」、とおっしゃっていた…
ギリシア神話の勉強の続きを書く。“変身”がテーマだ。古代神話で、人間が動物・植物・星などへと姿を変える物語は、人が「自己の限界」を越えて、自然や神々との同一化を体験する象徴とみなせる。変身は罰でもあり、救済でもあった。オウィディウスの『変身…
オルフェウスとエウリデュケギリシア神話のレクチャーで竪琴の話を聞き、オルフェウスのことを調べてみた。その主要な部分は、「オルフェウスは、美しいニンフのエウリュディケと結婚するが、結婚直後、エウリュディケは蛇にかまれて急死してしまう。彼は悲…
シャコンヌ アンドレス・セゴビア編曲クラシックギターでよくシャコンヌを弾いたり、聞いたりするのだが、そのたびに、「この曲は人間の運命そのもののようだ」という感覚が心の底から湧いてくる。もちろん、〈無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 …
祈りこの拙い絵は、浅草の近くで私が書いた線スケッチだが、これを見返しながら、「祈り」とはどんな心的行為なのだろうと思い、人智学の見解を整理してみた。(どうでもいいことだが、絵の中の女性らしき姿は、私の女房である…。)祈りとは、「人間の魂が霊界…
自治体が実施する文化講座をスポットで受講した。オスマン帝国の興亡史である。講師は、その道の第一人者で、大変有名な大学の名誉教授だったが、私の教養不足のせいで、ほとんど記憶にも残らず心にも響かず、時間が流れていった。講義は、膨大な情報量を凝…