人智学的つれづれ草

日常の体験と人智学で学んだことを結びつけ、広げます。

デジタル教科書は、生徒を“成長”させるか?

中教審の作業部会は、デジタル教科書を正式な教科書に位置付けるという中間案を大筋で認めたそうである。各メディアは、問題点として、教員が使いこなせるかとか、教科書業界の負担が大きいとか、生徒が遊びに使ってしまって学力向上に影響があるとか、通信のトラブル時の処理が大変だとか、提供する側の視点からのものが多かったような印象がある。
一方、生徒側に立った視点からのデメリットの指摘もなくはなかったが、あまり強調されていない気がする。いくつか挙げられるが、一番心配なのは、長期的な心身への影響がまだ、完全にはわかっていないということだ。これは、専門家の議論によってすぐにわかる性質のものではない。懸念するのはたとえば、①情報の過剰摂取、②デジタルデバイスへの過度の依存、➂ソーシャルスキルやコミュニケーション能力の発達に悪影響を与える可能性、➃表情や身体言語などの非言語的なコミュニケーションの不足などがあるが、そのほかにも、デジタル教科書には多くの情報や教材(リンク)が詰め込まれているが、これが逆に子供に対して「学ばなければならない」というプレッシャーを感じさせることがあり得る。また、デジタルプラットフォームでは、他の子供たちの学習進度や成果が見えることが多く、これが自己評価に影響を与え、劣等感や焦りを感じさせることがあるかもしれない。形が新しくなったただけの、結局は「効率的に楽しく詰め込み」をする教育が、逆らい難く進行している。
どうやら2030年度から導入されそうな勢いだが、あと5年ほどで、生徒の心身への影響が、“完全に”わかるのだろうか?