新聞ではめったにお目にかからない、大変めずらしい人物が顔写真付きで、つい先日掲載されていた。「おんがく×ブンガク」という連載物の中で、ヘッセの『デミアン』が、かなり大きなスペースで紹介されていたのだ!ヘルマン・ヘッセの作品は、一般的にはあまり読まれなくなっているようだが、その理由として、ヘッセの作品は、哲学的で精神的なテーマが強く、ライトなエンタメ作品や直感的に理解しやすい現代文学の方がうけていることが考えられる。ただ、はまる人(例えば私)は一定数変わらずにいるようだ。ヘッセ友の会・研究会という組織もあり、内面的な自己探求や精神的な成長に関心のある人が多い気がする。一方で今は、<人間の奥にある内面的な制約を乗り越える>などという超重たいことに関心が向かない時代なのかもしれない。
この連載では、タイトル通り音楽と文学を並べながら、色々な印象を描いていくのだが、今回はヘッセの深い音楽への愛を語りつつ、『デミアン』に出てくるオルガン曲にまつわる内容を紹介している。
音楽との関連で『デミアン』で強く印象に残った文章をひとつだけ載せておきたい。
“音楽がすごく好きなんだ。どうしてかって? あらゆるものの中で、音楽だけが道徳的ではないからさ。”
ここまで言い切るのはすごいと思うが、“道徳的でない”、というのは、伝統的な道徳観念やあらゆる社会常識に囚われない自由なカタチの一つが音楽だ、という風に読める。自己の内面を自由に表現する手段・象徴として音楽があるということだろうか。
しかし、自由に自己を生きながら、人には親切にしたい、という“道徳心”もなかなか離れていかない。