東日本大震災以降、整備が続けられている「風の電話」には、五万人以上の方が訪れているという。多くのメディアで紹介されたあの「風の電話」だ。電話機の横には、“風の電話は心で話します 静かに目を閉じ 耳を澄ましてください 風の音が又は浪の音が 或いは小鳥のさえずりが聞こえたなら あなたの想いを伝えて下さい”と記されているそうだ。
失われた愛する人との再会を願って電話をかけるという場所は、世界中にあるらしい。アメリカの「電話ボックスの神」、アイルランドのある地域で行われる亡者と対話を試みる儀式、さらにオーストラリアの「静かな電話ボックス」や、スコットランドの「失われた声」というインスタレーションもあるらしい。
共通しているのは、<亡き人との心のつながりを求める場所>という観点だ。日本で行われたインターネット調査では、霊魂を信じる人の割合が高齢になるほど高く、60代以上では、70%以上が「信じている」と回答した。若年層(20代~30代)では、信じていないと回答する人が多く、約60%が信じていない。とても自然な結果に思える。
「千の風になって」という歌を思い出したが、その歌詞の中で死者は、「私はお墓の中になんかいません、風になって大空を吹きわたっています」という内容のことを訴えかけている。そう、まさに訴えている。特定の場所には死者はいないのだ。
テレビの再放送を見て思わず涙がこぼれてしまった。私にも、大空にいる家族がたくさんいるからかもしれない。
人智学では、死者の意識は非常に明瞭で、残された人の思いを敏感に感じ取っているという。もうすぐお彼岸だ。私も、電話をかけてみようと思った。その電話は、お墓に行っても、お仏壇の前でもどこでも、いつも、私の中にある。